01目覚めれば君の寝顔、泣き顔、笑い顔



寛貴が目をさませば、腕の中には昨夜もその人の気力が追いつく限りに愛し合ったいとしい子。
うっすらとあいた口はまだすやすやと寝息を立てている。そっと閉じられた瞼を縁取る睫は長く細い。
起きる気配は感じられず、目元はぴくりとも動かない。
顔にかかっている髪をそっと梳けば、指の間からさらさらと流れていった。

こうしてずっと目の前に、この愛しく思う黒矢の顔を眺めていると、くるくると変わる表情が、思い浮かぶ。
笑い、泣き、怒り、苦しみ、――――沢山の想いを、隠してしまうことなく素直に明かす。
でも寛貴は、黒矢のそれが自分の前でだけなのだと知っている。
寛貴と出会い、友情というものをもつまでは心に負った深い傷に苦しめられ、感情が鈍磨していた黒矢だったが、
寛貴が黒矢に与えてくれる愛情に、段々と凍り付いて砕かれてしまった心は緩やかに暖かさと正常な形を取り戻していった。
その課程で、最初は今では想像できないほどに暗かった表情があかるくなりそのの種類が段々増えていくのを、寛貴はすぐ傍で見てきた。
そして、それは寛貴を助けてくれているのだ。
寛貴の殺伐とした、理性だけで形作られた機械だらけの世界。
そこに、ふわりと舞い降りた明るい日だまり。日だまりの数は、日に日に増えている、大きさを増している。
それが黒矢の与えてくれたものだった。金属のような冷たい色だけを写し取った世界が、色づいてく。
寛貴の世界の中心には、黒矢という名の一輪の花が咲いている。

その花を、寛貴は守らなければならない。黒矢を守ることが、自分を守ること。
黒矢が居てくれるからこそ保たれている平穏を守るために。
寛貴は腕の中にいる黒矢の小さな身体を、きゅ、と抱き込んだ。
この愛おしい子を、どうか守ってやろう。自分だけでなく、黒矢の幸せのためにも。  
なにがあろうと、障害の類は、自分には影響すらない。そんなもの感じないほどに、この子を守ってやりたいと強く思う。

例え、そのせいでじぶんがこわれようとも、何にも代えられない代償があろうとも。
黒矢の柔らかな髪を梳いて、横に流れている前髪をかき分け、その額に誓いを込めて、キスを。

そうして夜は更け、またげつようびがはじまる。