5 髪から水滴がしたたり落ちるのに目を留め、頭をがしがしとタオルで拭いた。髪がぼさぼさのままだと格好が付かないので手櫛で軽く梳く。 やり残したことがないのを頭の中で確認してから、寝室へと足をすすめた。 かちゃり、と少し音を立てて部屋にはいると、黒矢が居た。 黒矢はベッドの上で、こちらに背を向けて俯せで寝転がって、ヘッドホンを耳に音楽を聴きつつ、本を読んでいた。 こちらには気付いてないようでそっと近づいていけば、どうやら先日新しく買ったと言っていた小説本を読んでいるようだ。 黒矢は本を読むのが好きで、見るたびに違った新しい本を持っている。今日のは世間でも有名なファンタジー物だ。 「ん〜〜♪」 小さい鼻歌でメロディを追いながら、くりくりとした目は本の文章を追っている。 黒矢が一向に気付きそうにないので、少し悪戯をしてみよう。黒矢は耳が弱いので、狙うことにする。 「ふぅっ……」 息を耳元に吹いてやれば、びくっ!と身体を跳ねさせて、黒矢がこちらに気付いたようだ。 本をばすっと勢いよく閉じて、ヘッドホンを急いで両耳から取り去り、寛貴の方に振り返った。 「ひっ、寛貴っ!! 何するんだよ! 俺が耳弱いのしってるくせに……!」 「何だよ、俺が戻ってきたことにも気付かずに本と音楽に浮気してる方が悪い。」 言われた黒矢は、返す言葉に詰まってしまう。俺の言ってることの方が理屈が通っているのに、と不満げだ。 ぷっくりふくれてしまった黒矢の機嫌を直そうと、寛貴は黒矢の頬にそっと触れるだけのキスをした。 黒矢は一瞬真っ赤になるが、もう寛貴のそういう行為にも慣れたようで、大声を出すようなことは無い。 寛貴はベッドの淵に座るとはぁ、とため息をついた。しかし、表情に陰りはなく、むしろ笑っている。 「こうしてお前と一緒だと、凄い楽。学校居るときは、どうしてもキスなんて出来ないし、 しかも最近は忙しかったからクラスに居てもろくに遊んで騒げなかった。まったくつまんねぇったらこの上ねぇ」 体育座りのように、膝を抱えてすわりなおした黒矢は、寛貴の正直な言葉にくすくすと笑った。 「ふふっ……。でも、寛貴とキスできるのも、恋人出来るのも、俺だけなのも、もうわかってるから、 もう女の子達に囲まれる寛貴見てもそんなに嫉妬しないし、学校では前より楽だよ」 最後に、やっぱり寛貴が傍にいないのは寂しかったけどね、と付け加える黒矢は、すっかり機嫌をなおしたようだった。 黒矢は、寛貴がどうしたって周りにもてはやされることに関してもう諦めたようだった。 「黒矢……」 寛貴は黒矢を振り返った。真剣な表情で、黒矢を見つめる。 学校では寛貴と傍にいられないことを寂しく思ってくれていた黒矢が、あんまり可愛く見えたようだ。 「寛、貴……?」 寛貴は黒矢を抱きしめ、その肩口に顔をうずめた。 そして、一瞬のうちに黒矢のこぶりな顔を捕まえて、唇に甘いキスをおとした。 「んっ……! んぅ、ん……ぁ、」 寛貴は巧みに舌を使って黒矢の口内を蹂躙し、犯してゆく。 「ふぁ……」 黒矢の息は既にあがり、今まで平然として本を読んでいたのが嘘のようだ。 二人の口が離れる頃には、すでに黒矢が甘い吐息を漏らしていた。 「寛貴……」 寛貴は性急な動きで黒矢をベッドへと押し倒すと、黒矢のジャージを剥がすように脱がせて首筋に赤い刻印を刻んでいく。 「んっ……、ちょ、寛貴……」 黒矢の制止の言葉も聞かずに、寛貴は黒矢を快楽の海へと誘う。 もう、聖夜だと言うことなんて忘れていた。 「あっ……! や、もう、イかせてよっ……!」 黒矢は、どうにもならずに疼く自分の中の高まりに焦れていた。 黒矢のそれは甘い先走りを零していた。が、寛貴はあえてそれに触れようとはしてくれない。 黒矢の奥まった蕾を二本の長く細い骨ばった指で解していた。 「今日は、一回もイかないままヤってみようぜ?」 寛貴は、挑発するように問いかけるが、黒矢は、もう我慢できないと言うようにふるふるとかぶりを振る。 「だめっ……、もう解さなくて、いいから、早く寛貴をちょうだい……っ!」 「解さないと辛いのはお前だよ」 そう言って寛貴は、また一本指を増やして黒矢の中の好い所を抉る。 するとまた快感を与えられた黒矢は、身悶える。しかし、絶頂に達するまでの決定的な快感は与えてもらえない。 否、寛貴が意図的に与えてくれないのだ。 「もう、限界だよっ……、寛貴が欲しいのっ……!」 そこまで求められて、動かない寛貴ではない。黒矢が見せるあまりの痴態に遂に陥落を決意した。 「ったく……、黒矢は甘えんぼだな……」 とか言っていて、実際我慢しきれないのは寛貴だったりもするのだが。 黒矢を弄り倒して、こんな風に痴態を拝むのも、寛貴の好きなプレイの一種だ。 寛貴は、黒矢の中にあった自分の指を抜き去り、黒矢の脚を自分の肩に掛けてしまうと自分の熱く勃ち上がったものを、 ひくひくと疼いた様子を見せる黒矢の蕾に押しつける。 「ふぁっ……、んぅ……」 それだけで甘い吐息の漏らす黒矢に、そっと口づけをおとして、一気に腰を押し進めた。 「んああぁっ……!! ぅあっ、あ………っ!」 黒矢はあまりの衝撃に身体を大きくしならせる。 浅い呼吸を繰り返す黒矢の腕は寛貴の背中にまわされ、その指はきつく爪を立てた状態で傷を付けていく。 しかしその刺すような痛みですら、寛貴は甘んじて受け入れていた。 「黒矢、っ……動くぞ?」 聞けば黒矢はこくこくと頷いて、腕に入れる力を更に強めた。 寛貴は、黒矢の中を抉り、既に解りきった彼の好いところばかりに、腰を打ち付ける。 「あ、あ、ふぁっ……! ダメ、や、もう、無理っ……!!」 激しすぎるその動きに、黒矢はもう意味をもつ言葉を発することは出来なかった。 「も、イっちゃ……! ああっ……!!」 「おいおい、あんまり、締め付けるなよっっ!」 未だ激しい動きを繰り返しながらも、黒矢のきつい締め付けに、寛貴も余裕のない声を発した。 間もなく、二人で同時に達したのは、言うまでもない。![]()