今日は実に楽しい一日だった。
最後の辺りが良かったから特別そう感じるのだろうが。
帰りの車の中で鼻唄を歌っていたら、嫌そうな顔をした鳴美に、気持ち悪い、と言われてしまった。
寛貴いじめるのは愉しいし、鳴美を自慢できるし、充実していた(と俺は思う)。

車の中で、鳴美に、晩飯何がいい?と聞くと、パスタとドリアが食べたい、と言うので、途中にあるスーパーで買い物をすることにした。
明日の朝食用の食材である、ベーコンやフルーツも買い足し、買い物かごは程無く一杯になった。
実は、子供の頃はスーパーなんて来たことがなかった。
家系自体が古い家で、そのせいか、買い物はもっぱら商店街の得意の店ばかりだった。
中学生になった頃、初めてスーパーというものの存在を知ったときは、本当に驚いたのを覚えている。
今では、すっかり庶民的な生活に慣れてしまった。
「鳴美、家の紅茶の葉っぱって、まだあったっけ?」
「……いや、そろそろ空になるかな」
こんな会話もしょっちゅうだ。俺たちは、随分と庶民的になった、と感想をもった。

買い物を終えてマンションに帰ると、俺は食事の支度、鳴美は掃除をし出す。
鳴美は、毎日フローリングを便利な掃除道具で拭いている。
鳴美曰く、汚れてからだとやる気をなくすから、こう言うのは汚れる前にやる、ということだった。
その細やかな掃除が終わる頃には、夕食もすっかり出来上がる。
鳴美は、俺の作った食事に関してはあまり感想を言ってくれないが、今日は、ふと、美味しい、と漏らした。
それが聞けるだけで、俺の苦労は吹き飛んでくれると思う。

食事の後は、風呂に入り、適当に過ごす。
テレビを見たり、本を読んだり、そこは様々なのだけれど。
俺の一番の観点はもちろん鳴美だ。風呂上がりの鳴美は、とことん色っぽい。
うなじに張りつく濡れた髪、湯に浸かったせいで紅潮した頬、湿り気を帯びて一層長く見える睫毛に、
寝間着からのぞく肉付きの薄い鎖骨だとか、白い肌。
とにかく、鳴美の全てが、俺の欲情を煽り、そしてより駆り立てる。
ソファに座って何か本を読んでいるいる鳴美に後ろから近づき、屈んで、抱きすくめる。
ここまでは、鳴美も慣れているのか、いつものこと、と体勢も替えずに本を読み続けている。
ここで、うなじに口付けを一つ。
「ッ……!?」
俺の口付けの意図に気付いた鳴美は、すごい勢いで耳まで真っ赤にすると、抱きすくめられながらも、身を捩る。
その間にも、俺は愛撫のキスを繰り返した。
「あっ……す、か……、するなら向こう、でっ!? んっ……」
敏感なのはどこもそうなのだが、特に敏感な耳の裏から筋にかけてを舐めてやれば、肩を大きくすくめて、小さく声を漏らす。
「飛鳥っ……!!」
鳴美が、快感の中で身をよじり、声を荒げるので、鳴美の前に回り込んで、鳴美を横抱きに抱き上げ、ベッドルームへと向かう。
行儀悪く、脚で扉を開け、暗い室内に入っていく。
そして、ベッドにとさり、と彼の細い身体を降ろす。
「……、明日も普通授業だ」
「わかってるよ。でも鳴美も、俺が抑えられないのを、知ってるだろ?」
横たわる鳴美の上に跨りながら、にやり、と意地悪い笑みを浮かべてやれば、鳴美は、顔を赤くして目をそらした。
「……鳴美」
俺は、両手で鳴美の顔を自分の方へ向けさせて、甘い吐息を漏らした唇に、口づけた。
「ん……、んぅ……」
ちゅく、とわざと音を立てて口腔内を貪る。
その音が耳に届き、鳴美は身を捩って身悶えてしまうような甘い羞恥から逃れようとするが、俺はそれを許さない。
顔を押さえていた両手を、そのまま下に降ろしてゆく。
寝間着の長袖Tシャツをたくし上げて、肉付きの薄い肌をまさぐっていれば、鳴美の甘い喘ぎが、徐々に大きくなる。
甘い声は、俺をますます魅了してやまない。
「ぁっ……、ゃ、だっ……」
鳴美の、敏感な箇所、数え切れない情事での経験からもうわかりきっている。
俺は、鳴美に快感を与えようと、胸までたくし上げたシャツから覗く、小さな突起に指をかけた。
「ふ、ぅあっ……、ゃ、ぁ……」
「その”いや”って、気持ちいい、だろ……?」
鳴美の真っ赤にした耳元で、囁いてやる。
その声ですら、鳴美にとっては快感となるようで、一層喘ぎ声は甲高いものになった。


「鳴美……っ、挿れる……ぞ?」
「ぁ、待っ……て、っ!!」
返事も待たず、慣らされきってひくひくと口を動かしている熟れた蕾に、俺の熱く勃ちあがったものを宛う。
それだけで、入り口は俺のものを飲み込もうと疼いた。
鳴美の勃ちあがったものは、未だ達することを許されておらず、甘い先走りを先端から零している。
「も、こっちも……、我慢の限、界だっ……!」
「ふ、ぃ、ぁ、あああっっ!!」
扇情的な鳴美の痴態に我慢できず、一気に腰を押し進めた。
鳴美は目を見開いて、挿入の衝撃に耐えている。背を撓らせて、嬌声をあげた。
全てが収まった後も浅い息を繰り返して、一気に押し寄せた快感と衝撃をやり過ごしている。
俺は、鳴美の息が落ち着くのを待って、顔や首筋にキスをおとした。
シーツを掴んで、ほとんど真っ白になるくらいにまで力の入った手を、俺の背中にまわさせてやった。
「動いても、いい……?」
「っ……」
その言葉にまた鳴美は羞恥に顔を歪めた。けれど、頷くと、小さく息を吐いた。
俺はそれを肯定の意義ととって、深く出し入れを始めた。
「ぁ、あっあ……ぁあっ……」
最初の内は緩く、けどそのうちに激しく、挿入を繰り返す。
動きが激しくなり、良い所を抉れば、鳴美の嬌声にも甘さが含まれ、俺の背にたてられる爪にも力が入る。
背に走る痛みは、それは痛いけれど、苦痛とは思わない。
「っ……ぁ、あ……、ぃあ、あっ……!」
鳴美は未だ一度も達していないせいか、もう既に、限界が近いらしい。
喘いだ音を出すのが嫌で、必死に隠そうとしているが、抑え切れていない。
「もう……、イき、そう……?」
俺が腰を使いながら聞けば、鳴美は目尻に涙を溜めながら首を縦にふった。
「っぁ! ぃっ……あ、あ……、んぅっ」
「……っ……!」
俺も流石に、深く強い快感には長く耐えられそうもなく、いっそう激しくなる動きと共に、吐く息さえも荒くなる。
焦がれるほど恋しい鳴美の顔を再度見やれば、形のいい唇だけで俺に訴えていた。

(き、す、し、て)

声に出すと、きっと意味のない言葉ばかりが浮かぶだろうから、唇だけなんだろう。
小さいメッセージに応えてやろうと、顔を近づけて、――目を合わせて微笑めば、かの人もふと微笑む――、口づけた。

小鳥が互いに啄むような、小さいキスで、俺たちには充分だ。

想いが在りさえすれば。