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部活のバスケを終えて家に帰ってから、即座にベッドに倒れ伏した。
わけが分からない。
何を知っているのか。
彼は、何を知っている??
寛貴は俺に『本当』を求めているのか。
だとしたら、それはなぜ? 何を知っていてそんなこと?
寛貴に知られたくない一心で今まで偽ってきたのが、馬鹿みたいで。
でも、知られたその後の未来を考えると、胸は苦しくなるばかりで。
偽ることなのか……、『本当』を話してその後を苦しむことか……。
なにを、頑張ればいいのか分からない。何もかも分からない。苦しくなる胸を、抑えることしか出来ない。
今はただ、ベッドの上で身を縮めて丸まって、押し寄せる不安にただ泣くことしか、出来ないんだ。

コンコン、と部屋の扉が鳴った。
誰か、と思いつつもとにかく泣いているところを見られるわけにはいかない。
とっさに、涙でまみれた顔を手の甲でごしごしと擦る。
「黒矢、入るわよ?」
かちゃり、とドアが控えめな音を立てて開く。入ってきたのは、姉のさくらだった。
「さくら姉ぇ……、どしたの??」
部屋に入ってきた姉に作り笑いで言葉を返す。
「どうしたもこうしたも、夕飯の時間なのに黒矢が来ないから呼びに来たんじゃない。何してたの?」
「な、んでもない、よ」
一瞬動揺してしまい、とぎれとぎれになりつつもごまかした。
しかし不審に思ったのかさくら姉ぇは俺の顔を無理やり掴むと自分の顔の前に持っていく。
じいっと、見つめられて、途端俺は何故かおかしな罪悪感に駆られ合わさっていた視線を逸らした。

「……泣いたの」
「っ! ………」
やっぱり、ばれてしまった。なんて、女の勘は鋭い。
「まぁ……、ね」
あっさりとばらしてしまう。なんだかさくら姉ぇの前では嘘は付けなかった。
「どうして?」
やけに、ニッコリ優しく聞き出そうとするさくら姉ぇはある意味ちょっと怖い。
昔小さい頃に常にこのさくら姉ぇと比べられていたが、いつでもさくら姉ぇは俺の味方だったんだ。
『周りなんて関係ないの。黒矢のしたいようにしなさい』といつも大事な教えを俺にくれた。
そのためか、今も心配してくれているのはすごくよく伝わってきて、その優しさが嬉しい。
「寛貴の、事……なんだ」
「あぁ、寛貴くん、ねぇ……」
さくら姉ぇは俺の叶わぬ恋を知っていた。もう半年程前からだ。
寛貴の事を好きになった直後にはもうさくら姉ぇに知られた。
さくら姉ぇは、男の子が男の子を好きになったっていいじゃない、と俺の性癖を別に否定することもなく、
むしろ、これからもっと可愛くなっちゃいましょ?と、優しく接してくれた。
それからも日常的に起こった寛貴に関わる出来事をよくさくら姉ぇに話していたので、
さくら姉ぇは俺の恋模様の大部分を知っていることになる。

「実は、今日部活の直前に部室で寝ちゃってさ。寛貴が起こしに来てくれたんだ」
「あら、よかったじゃない」
「でも、なんだか俺、昔の夢見ててうなされてたんだって。」
「うん」
「それで、なんかあったか、って聞かれて何でもないからーってこたえたら、寛貴にさ、
『お前は何時になれば俺に本当の姿を見せてくれるんだろうな』って言われちゃって。どうしたらいいか、わかん、なくて……」
「そうだったの……。 全く、恋する乙女はコレだから大変ね!」
さくら姉ぇの言葉につい、頬を染めてしまう。確かに、『自分って乙女だよなあ』とは自覚していたが、
改めて他人に言われるとちょっとばかし、羞恥心が生まれるものだ。
「乙女、ってさくら姉ぇ。俺は男だよ」
「男でも乙女は乙女でしょう」
もっともらしいことを言ってくれる。否定する気は、ないが。

「それで? 寛貴くんが、なぜそんなことを黒矢に言ってきたのか、がわからないの?」
「……そういうことだよ」
そうねぇ、と言うとさくら姉ぇは少しばかり黙り込んでしまった。
「寛貴くん、薄々気付いてるんじゃないかしら。黒矢が必死で自分を取り繕ってるの」
「やっぱり、少しづつ、気付いてるのかなぁ」
予想はしていたが掛けられたさくら姉ぇの言葉に落胆する。
違和感を覚えられたら、いつかは言わなければならないことだとは理解していたが。
それでも、言いたくはない。少なくともあの地獄のような日々を抜け出し、高校生になってからは
その平穏を喜んで生きていたのに。
寛貴に知られたら、好きな人ともうずっと、二度と面と向かって話すことも叶わなくなってしまう。
それだけは、嫌だ。どんなに自分をひた隠しにしてでも、友達としてでも、寛貴の傍に、近くに居たい。

「黒矢……、あんまり深く考えるともっとわけ分からなくなるから。そんなに悩まないの。いい?」
「うん、ごめんね。有り難う、心配してくれて」
「こんなことぐらいどうってことないわ。いつでも相談してちょうだい?」
「……よろしく、頼むよ」

さくら姉ぇはいつでも味方で居てくれた。
これからも、ずっと。今までみたいな、一人だけの孤独はもう味わうことはないんだ。



























07'7.31 一部修正