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寛貴と部室で逢ったあの日からしばらく時間が経ってしまった。
もうすぐ、11月も終わる。半月以上の時間、寛貴とのわだかまりはそのままだった。
結局俺の勇気のなさが災いして、あれから一言も話せていない。
今日こそは、今日こそは、と毎朝思うのだがそれが実行に移せない。
真実を、話さなければいけないんだ。きっと。
それで寛貴と離れる事になってしまったとしても、俺の過去を伝えなきゃいけない。
俺の身体は、陵辱されたような穢れた身体なのだから。
そんな身体では自分で勝手に罪悪感に駆られ、いつかは寛貴の傍に居られなくなるだろう。
しかし時間は過ぎてゆくので、いつからか耳に入っては抜けていく授業を終えた後、
今日も仕方なく、すっかり憂鬱なものとなってしまった部活へと行くことにした。


「はぁぁ……、なんとなく嫌な予感のような、良い予感のような……」
途中で、突如感じた悪寒に身を震わせながらも体育館にある部室へ向かう。
部室棟と体育館は教室棟から少し離れたところにある。
渡り廊下で繋がってはいるが敷地が広い為にここまで離れているのだ。
歩いて向かわなければならないので5分弱は掛かるだろうか。


「よぉ、黒矢ぁ。良いところに来たな」
部室に入った途端に話しかけてきたのは、龍暁だった。
「龍暁。どうしたんだよ」
寛貴に似た体格で背が高く、テストでは常に寛貴とトップを争う程頭の良い龍暁は、
バスケ部の副部長として寛貴を支えていた。
寛貴は最近、来年の1月から生徒会入りが決まって生徒会に入り浸りになってしまったので、
龍暁が代わりに部活をまとめてくれている。
「いやぁ、困ったことになった」


途端に真顔になった龍暁は腕をくんでうーん、といった様子を作ってみせる。
「どーしちゃったんだよ」
「実はな……、今日まで提出の書類を寛貴が部室に忘れていったためにバスケ部の部費の決算が出来なくて困っている、
 と寛貴から携帯にメールが来た」
その言葉に、何か違和感を感じた俺は龍暁に訪ねる。
「それってさ、やばいんじゃないの?」
「やばい。うちの生徒会は期限に厳しいからな。出さないと、来年の1月から3月は部費が無くなる」
「ふーん……ってソレとんでもないことだろ!? いくら寛貴が忘れちゃったからって何そんなにしらっとしてるんだよ!?」
龍暁のある意味究極的に無責任な発言に、驚きが止まらない。


水華学園高等部の部活動費は4〜8月、9〜12月、1〜3月にわけて出される。
しかし規則に厳しいため期限を忘れたりすると部費の全てが他の部に回されてしまう。
学校から出されるお金で自由に使えるのはそれだけなので必要ないわけがない。


そうだっていうのに、龍暁の無責任さは何なんだろう。
だって、部室棟と生徒会の活動する生徒会室がある教室棟は離れてる。
一寸の休みもなく時間に追われる寛貴が部室まで取りに戻れるわけがない。というかありえない!!
「というわけで、黒矢。届けてこい」
急にニッコリしだした龍暁が言った。
「…………はい? なんて言いました、龍暁さん?」
「うん。寛貴のところまでいって届けてこい」
「なんで俺が行かなきゃいけないんだよ! 龍暁が行けばいいじゃんか!」
まさか、先程感じた悪寒はこれだったのだろうか。
いつもの俺ならば確かに『寛貴!? 行く行く!』と喜んで答えていたであろう。
しかし今は違う。喧嘩したわけでは無いけれど、あまり、逢いたくない相手だ。
「どうした……? 寛貴のところに行きたくないのか? 会えるんだぞ?」
「あっ…………」
そこまでいって漸く気づいた。龍暁だって、俺が寛貴に想いを抱いているのを知っているのだ。
なのに目の前で拒絶するような態度を取れば、不審に思われるだろう。
「寛貴、嫌いになったのか? 寛貴のところなら遠いが行くだろうなって思ってたんだが…」
「いくよ! いく! 生徒会室でいいんでしょ!?」
途端に意見を変えた俺に龍暁はなんとなく首を傾げている。
「書類、どこ!?」
「あぁ、これなんだけどな……」
大きめの茶封筒に入ったそれを龍暁が差し出してくれた。
俺は受け取り中身が頼まれていた書類だと言うことを確認すると部室の扉に手を掛けた。
「いってくるね!」
「おう、周りの男子に気を付けろよ」
「どういう意味だよっ、それ! じゃね!」

はてさて、俺は無事生徒会室にたどり着けるのだろうか…………。
というより寛貴に逢ったらどんな顔すればいいの?
勢いだけで飛び出してきてしまったため何も考えていない。
今更『やっぱり行きたくない』なんて戻れるわけもなく……。
結局俺は部室棟をでて、長い渡り廊下を歩きだしたのだった。

























07'7.31  一部修正